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【楽譜紹介】第2回連載:マジックフィンガーテクニック Book1               指導ポイントと活用法

2011/02/09(水曜日)

gp13.jpg〔英語版〕「マジックフィンガーテクニック」Book 1       (700円+税/GP13

連載 第2回「マジックフィンガーテクニック Book1 指導ポイントと活用法」(田中 巳穂)→バックナンバーはこちら

今回はBook 1の活用法を、実際のレッスンビデオを交えながらご紹介します。

《概要》
Book 1では
1.きれいな手の形
2.独立した指の動き
3.左右の均等性
4.全調の理解の徹底
といった内容が課題とされています。

この本が出版された1966年当時の状況は今日とは異なり、ピアノライブラリー(1976年出版)、ピアノベーシックス(1985年出版)が開発されるずいぶん以前であり、「かみくだき式」の方法も現在とは異なったものであったようです。
調の現れる順番も、ピアノパーティー、ピアノベーシックスでおなじみのCメジャー、Fメジャー、Gメジャーではなく、最初から半音階上行に従った全調移調が提案されています。

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《活用法の3つの柱》(提案)

1. ウォーミングアップととらえて、奏法にこだわる
全調移調は後回しにして、Cメジャーの部分だけを取り出して進めていくことができます。
約半分の曲が2小節単位で出来ていて、20曲のうち16曲は5指ポジション(左右ともドレミファソ)ですので、タッチの指導に最適です。
ハノン、バーナムはじめ、さまざまなテクニック教材のイメージでしょうか。

2. 音をさがして移調を試みる
ほとんどの子どもはCメジャーを弾いたら次を弾きたがります。調のバラエティがバスティンならではの、楽しくカラフルな色彩ですね。

移調のスタンスは、すぐに音を教えてしまわずに、子ども自身が「発見」する過程を見守りたいと考えます。音やポジションを暗記することを奨励するよりは、自分の手、耳、頭を使っていろいろと試してみることを勇気づけたいと思います。

日頃のレッスンで、脱力など合理的な奏法を伝えていると、相乗効果でそのうち自然にできるようになっていきます。

3. 初見の導入
1曲が短いので、音の上り下り、フレーズの音型、リズムパターンなどの情報をとらえる訓練が短時間でできます。音楽の情報を言葉に置き換えられることを大切にします。

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《内容とポイント》

前回の概要でも述べたとおり、この教材では概ね見開きの2ページ(2曲)でひとつのユニット課題が与えられています。Book 1では全部で8つのユニット課題に取り組むことになります。
では、具体的な内容とポイントを見て行きましょう。
【 】内はユニット課題、タイトルはエクササイズの内容に合わせて、挟み込みの英訳を一部リニューアルしてみました。

【p.4~7 ステッピング ?となりあった音同士の練習?】
1. 元気に学校へ

ジェームス・バスティン先生による「練習のヒント」は以下のとおりです。
各練習のねらいとして意識しておきたい点を( )内にまとめました。

1. 片手練習→両手練習(左右の意識、ソルフェージュ)
2. 指を曲げる(奏法)
3. レガートで(手の感覚と耳の連動)
4. 声を出してカウントする(拍感、音楽する身体づくり)

♪ビデオのK君(年長・パーティーD・隔週レッスン)は、マジックフィンガーを使い始めたばかりで、撮影時が2回目のレッスンでしたが、この日は奏法と移調、初見をしています。
移調は前回のレッスン時に、手がバタバタしないことに気をつけて、2分ほど一緒に練習しました。間違えたときに自分で直せることが大切、という事も伝えています。
この程度の情報を子どもに与えて、ゆるく、長い目で見ていきます。


2. おうちへ帰ろう
前の曲と同じリズムパターンですが、始まりの音が5指の反対側からになり、旋律の曲がり角が2回に増えます。
右手の5-4-3-4-54は難しいですが、ゆっくり弾いて支えを作っていきましょう。


3. 丘にのぼって
1曲目と同じ内容に5454の1小節が加わり、支えと打鍵のトレーニングになります。
5小節が生み出すリズムに注意をむけると面白いですね。

♪少し奏法に意識をうながしたあと、移調しました。手がスムーズに動いていたので、リズムに乗って次へいく練習もしてみました。


4.こんどはおります
前曲と同じリズムパターンで、単純に反進行になっています。左手の3-4-545454 を意識したいですね。慣れてきたら、3.の右手と4.の左手を一緒に弾いてみましょう。


【p.8~9 スキッピング?ひとつとばしの音の練習?】
5. 2ひきのネコたち
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ここからは、左右対称の動きが出てきます。
絵もタイトルも複数になっていることで、左右をそれぞれ意識させる働きがあります。

♪K君と初見をしました。2曲それぞれの動きの特徴を、言葉と体で表現しています。
楽譜から曲の情報を読み取って、できるだけ沢山の言葉で説明できることを訓練します。


6. 2頭のキリンたち
これは少しトリッキーです。始めは両手とも小指始まりの反進行ですが、次の小節では並行進行に切り替わります。
頭の体操プラス左手3-43の訓練になります。


【p.10~11保続音+ゆっくりのトリル】
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7. オウムのトリル
親指を保ったまま、45-34-23と動かしていきます。
右手で中音域なのでオウムの声、なのでしょうね。4度のぶつかりもしっかり当てて、鳥の鳴き声をイメージしてみましょう。

♪前回のレッスンの際に初見で弾いた曲が、お気に入りになったようです。

mf_lv1_p11.jpg8. ペリカンのトリル
今度は左手で、親指を保ったまま、45-34-23と動かしていきます。
音が低くて太いので、ペリカンの声ですね。


【p.12~15和音】
9. カンガルーの赤ちゃん、とびだした!

交差するブロックコード(三和音)です。
動きをイメージして、リズムに乗って弾きましょう。

♪初めてのオーバーハンドにチャレンジ、楽しいです!

10. どんどんころぶ、ボーリングのピン
交差するブロークンコード(分散和音)です。
同じく動きをイメージして、リズムに乗って弾きましょう。


11. ヘリコプターにのって、景色をみよう
左手の和音+右手のメロディの組み合わせです。
右手のメロディは、今までに学習したステッピングとスキッピングからできています。


12. 電車にのって、びゅーん!
先ほどと反対で、右手の和音+左手のメロディの組み合わせです。
メロディの変化に気付かせたいですね。


【p.16~17親指をくぐらせる】
13. 優雅な車でゆったりと

手の下に親指をくぐらせるテクニックです。
スムーズにレガートをめざしましょう。


14. スポーツカーでカッコよく
前の曲より動きが忙しくなります。同じくスムーズさをめざしつつ、拍子のちがいにも注目し、フレーズが少し長くなったことにも注意を向けたいです。


【p.18~19分散された3度】
15. 波に乗って

1-3、2-4、3-5をペアとしたスキッピングの練習です。
親指始まりの上行、続く下行は波の上がり下がりをイメージして弾きましょう。


16. ヨットに乗って
同じ課題が今度は小指から始まります。リズムパターンが少し変化しているのは、前曲のサーフィンにくらべて、ヨットに乗っている分、少し休憩できる感じでしょうか。
なお、原題の「Sloop」は「1本マストの小型の船」という意味です。小節の頭に出てくる右手の小指を、船を支えるマスト(帆柱)と見立ててもいいですね。


【p.20~21半音階】
17. 少しずつ登りましょう

半音階の範囲がだんだんひろがっていきます。左右が並行に進むので、指使いに集中を要します。まずは片手ずつ、1セットできたら両手をゆっくり合わせましょう。


18. 半音階のてっぺんまで!
両手の1オクターブの半音階です。こちらもゆったりといきましょう。
正しい指使いは大前提ですが、手を固くして1個1個の音をねらって弾くよりは、片手ずつ指番号を歌いながら弾けたら1回目は合格、もアリかと思います。


【p.20~21 3度の重音】
19. 両足そろえてスキーをすべろう!

右手の1-3、2-4を使って3度をブロックで弾いていきます。指使いのバリエーションもあります。スムーズさ、正確さを目指します。それを聴ける耳がまずほしいですね。


20. スケートもスイスイと
全く同じことの左手バージョンです。
両方弾けたら、右と左を組み合わせても楽しいですね。

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《終わりに》

いかがでしたでしょうか。
実際に弾いてみると、とってもかわいい曲がいっぱいです。タイトルと絵と曲から、子どもとストーリーを作っていっても楽しいですね。

興味をお持ちになった先生方、楽譜をぜひ2ページ単位でご覧になってみてください。きっとすぐに、いろいろな課題が見えてくるのではないでしょうか。
ゆっくり弾いてみられると、1冊を通してどんなことが期待されているかを体で納得されると思います。
ちなみに、ジェーン・バスティン先生が要求されるテンポは、きわめてゆっくりです。
ジェーン先生に習って、子どもたちと一緒に丁寧な音作りを楽しんでいきましょう。

最初に提案した《活用法の3つの柱》である、奏法・移調・初見は、1回のレッスンの中で、ウォーミングアップ?エクササイズ?次回の予習、という流れで取り入れるのが効果的かと思いますが、最初は奏法だけでもいいと思います。
今回は教材のご紹介ということで、取材時のレッスンで沢山の内容を取り上げましたが、いつもは5分程度と時間を決めて、子どもの状態を見て課題を決めています。その5分がうまく使えたかどうかを反省することで、自分もスキルアップできれば、と願いをこめています。
いろいろな活用法をお試しください。

次回のBook 2ではBook 1の内容をさらに発展させたトレーニングが出てきます。
Book 1の1冊の中ですでに高度なスパイラル学習が展開されていますが、さらにダイナミックに、フレージングや左右のコーディネーションも紹介されます。
移調の補強にも最適ですので、またどうぞご覧ください。


♪次回連載 第3回「マジックフィンガーテクニック Book 2」は、2/28頃掲載の予定です。

♪当企画は東音企画の取材によるものです。
 画像・動画等一切の権利は東音企画に所属し、転載は禁じます。
 ご感想・お問合せがございましたら、東音企画までお願いします。

♪執筆者プロフィール  田中 巳穂(たなか みほ)
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東京芸術大学、バンクーバー音楽アカデミー卒業。
第3回ピティナ・ピアノコンペティションE級銀賞(金賞なし)、カナダ音楽コンクールソロ部門第2位、室内楽部門第2位受賞。2000年トヨタ指導者賞受賞。社団法人全日本ピアノ指導者協会正会員。鳴門教育大学・大学院講師。