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Q.ベートーヴェンのハンマークラヴィーアソナタについて御聞かせください。
今までに何度もハンマークラヴィーアを演奏していますが、いつも、作曲家自身がどのようにこの作品を表現したかったのか、それを理解するために作品に取り組むようにしています。なぜベートーヴェンはこのような、技術的にも、精神的にも難しい作品を作曲するに至ったのか。初めてこの曲に取り組んだ時に、このような作品は自分の能力では到底表現できないのではないか、と思ってしまったような曲です。その後公演を重ねていくうちに、その疑問はより膨らんでいきました(笑)。でも今は、この挑戦をようやく楽しむことが出来るようになりました。この難曲を演奏すること、自分のものにすること、そして何よりも聴衆の皆さんにこの作品に込められたものを単純化しすぎずに、理解してもらえたら本望です。
Q.ピアノを演奏する際に、大事にしていることは何ですか?
僕にとって一番価値があることは、感情です。聴衆との感情のコミュニケーションをすることです。一番わくわくする感情は、「インスピレーション」です。例えスポーツを観戦している時でも、友達と話している時でも・・・。自分の人生にさまざまなインスピレーションの感情を感じさせてくれるという意味で、音楽は素晴らしいと思います。
それは先輩に対する尊敬の感情だったり、家族への愛情だったり・・・。僕が演奏している時は、いつも自分が今弾いている音楽に一番強く結びつく力強い感情を探します。そして、可能な限りそれを大きなパワーで伝える努力をしています。
Q.ライブは「一期一会」の聴衆と出会う瞬間ですが、コンディションを万全にするために日頃から気をつけていることはありますか。
コンサートに向けて万全の準備をして、たくさん練習をして、前の晩ぐっすり眠れて、それでも上手く行かない日があれば、前の晩ほとんど眠れず、練習する時間も取れなかったのに成功した公演もあります。僕たちはみな人間なので、一所懸命頑張ってもその日の運に左右されることも少なくありません。出来る限りのことをやっても、すべてをコントロールするのは難しいですね。
Q.演奏の前にいつも行うおまじない、みたいなものはありますか?
あまりないですね。最近は舞台に上がるまえに聴衆の皆さんの席をのぞく癖があります。始まる5分前とか、30分前から5分前ぐらいの間に数回とか・・・。あまり色々考えすぎることはありません。待つのは退屈しますが、あまり遅く来てホールのマネジメントの皆さんを心配させるのもいやなので、遅刻はしないようにしています(笑)
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Q. これからどんなレパートリーをやっていきたいですか。
弾きたいレパートリーで言えば、今は減っているのですが、いつかはゴールドベルグ変奏曲をやりたいし、バルトークのコンチェルトも興味があります。でも今は、ピアノを弾くということよりも、聴衆の皆さんがどのように楽器に接しているか、ということに目を向けています。
今まではいつも自分の音楽、自分の演奏そのものばかりに注意を払っていましたが、逆にどれだけ聴衆の皆さんが静かに聴いてくださっているか、そこにあるピアノ自体の状態はどうか、あまり関心を向けていませんでした。僕の次なる目標は、クラシックというジャンルの僕のピアノを、新しい聴衆−つまり、クラシックコンサートに慣れていない聴衆−に知ってもらうことです。僕がいつも感動するのは、僕がコンサートをした後に、聴衆の方が「今までコンサートに行ったことがないと思うくらい、楽しめました」と言ってくださる時です。
Q.リサイタルとコンチェルト、違いはありますか?
もちろん大きな違いがあります。一番大きな違いは「自由」ですね。オーケストラとどれだけのびのびできるかです。ソロのコンサートでは、自分で自分のコントロールをします。好きな時間だけ止まってもいいし、好きなだけ待ってもいい。ゆっくりしたりもできる。素晴らしい豪華なホールで、大勢の方の前で弾けて、みんな自分の音に耳を澄ませてくれる。でもその分責任も大きいです。ミスをしたり止まったりすればみんな気付きます。もちろんプレッシャーはそっちの方が大きいです。
コンチェルトの演奏では、オーケストラがたくさん音を鳴らしますから、必ず誰かが弾いているし、ちょっと間違えても実際あまり目立ちません。でも問題なのは、チームワークが大切だということです。自分の考えをオーケストラにいる何百人という人たちと分かち合わなければいけないので、あまりフレキシブルには行きませんし、甘くはありません。それでも、仲間と協力し合って素晴らしい音楽を創り上げるのは本当に興奮しますね。
ありがとうございました!
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