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ラ・フォル・ジュルネ・エリアコンサート7日目(5/4火)リポート

●正統派のアプローチで

いよいよ最終日となった5月4日。丸の内エリアは今日も多くの人に溢れていました。

これまでの6日間、多くのショパン作品が演奏されました。別れの曲やノクターン、革命エチュード、英雄ポロネーズ、バラード1番など人気のピアノ曲から、チェロ・ソナタ、ピアノトリオ、ピアノ協奏曲などの室内楽や協奏曲、そしてポップス風・ジャズ風アレンジ。さらにショパンが影響を受けた作曲家、ショパンが影響を与えた後世の作曲家、ショパンと同時代の作曲家など、実に様々な「ショパンの宇宙」が繰り広げられました。

そして迎えた最終日。今日はショパン国際ピアノコンクールで優秀な成績を修めたピアニストも2名登場し、王道のアプローチを披露しました。





まず昼下がりのマルキューブに登場した宮谷理香さん。1995年ショパン国際コンクール5位入賞後、国内外での幅広い活躍で知られています。このエリアコンサート前日も、金沢で同時開催中のラ・フォル・ジュルネでの演奏を終えたばかり。しかし全く疲れた様子も見せず、快活で歯切れの良い演奏でマルキューブを賑わせました。特にバラード第1番はしっかりした打鍵から繰り出されるメリハリある音楽構成で、宮谷さんならではの存在感を見せました。



「200周年という記念の年に、私たちは今生きている?そのことに意味を見出せると素敵だなと思います。ショパンの時代にも色々な作曲家が生まれましたが、200年後にもこうして存在していることが素晴らしい。そういった意味でこの記念年は、ただ作曲家というだけでなく、人間ショパンに迫るきっかけになるのではと思います。」





またOAZOには根津理恵子さんが登場。会場の音響を確かめながら、プログラムを最終的決定したという根津さん。ショパンと縁ある作曲家で、「曲の中に込められている表情は違うけれど、メッセージ性が共通している」というモンポウやフィールドのノクターンも披露しました。2005年ショパン国際コンクールファイナリストとなり、現在も日本とポーランドを往復しながら演奏・研究を深める日々。本日の公演では、バラード1番や革命エチュードも迫真の演奏でした。「ショパンは孤高の天才で手が届かない神のような存在でしたが、実際にショパンが生まれ生活した土地に触れて、ショパンは本当に生きていたのだと改めて実感しました。自分の中で『もっと中に入っていってもいいのではないか』とアプローチが変わり、革命エチュードもより思い切って突き進んでいけるようになりました」。類稀な叙情性と情熱を湛えた演奏に、「涙が出ました」というお客さんも。





次世代も続きます。石井絵里奈さんはTOKIAでノクターン9-2やショパンの幻想即興曲などを好演。数百人の聴衆が会場を埋め尽くし、一音一音慈しむように聴き入っていました。昨日、實川風さんもこのステージで演奏しましたが、その教会のような音響効果は、若手アーティストの伸びやかでフレッシュな魅力を膨らませていました。

●ショパンとアンサンブル



またアンサンブルでは、南部やすかさん(fl.)と石川悠子さん(pf.)が、リスト「愛の夢」、ショパン「ロッシーニのテーマによる変奏曲」に続き、ショパンから影響を受けていたシャミナードの「コンチェルティーノ」等を披露。透き通るような音色とハーモニーが美しく、女性デュオらしい清らかさが感じられる演奏でした。



フルートの南部さんは「ショパンは何も考えずに聴くとすっと心に入ってくる曲調なのに、アナリーゼすると複雑な部分が沢山ある、珍しい貴重な作曲家だと思います」。自らアレンジや作曲も手掛ける南部さん、今後ぜひフルートで弾いてみたいのは「ワルツのロ短調。シンプルなハーモニーではないのに、シンプルに聴こえるのが魅力です」。またチェロとの共演に続いて2度目の出演となる石川悠子さんは、「ショパンは最後にチェロ・ソナタを書き、ヴァイオリン・ソナタのスケッチも残しています。これから先、弦や管などアンサンブルの分野も広げていくのではという時に、早すぎる死でした。複雑で繊細な和音を一つ一つ大切にするのは、ショパンの人生においても同じ。その気持ちを楽譜に残してくれたのだと思います」



マルキューブでの弦楽四重奏(vn西尾恵子さん、vn島戸祐子さん、増茂和美さん、vc横山二葉さん)は、ショパンと同時代の盟友メンデルスゾーンの弦楽四重奏曲第3番より。ヴァイオリンの澄んだ伸びやかな音と美しく重ねられた弦のハーモニーは、このエリアコンサートのラストを見事に飾りました。





また今年はショパン生誕200周年ですが、さらにショパンの時代より200年前はバロックの黎明期でした。ロマン派を飛び越え、一気に時代を遡ったプログラムを披露したのは浅井愛さんと太田光子さんのリコーダー・デュオ。リコーダー12本を持ち替えながら実に軽やかな指さばきで、ダカン、クープラン、ジャンベルティなどのバロック音楽を演奏しました。会場となったTOKIAは残響時間が最も長く、まさに教会さながら。その中で響き渡るリコーダーの音色は、聴衆を古楽の世界に一気に惹きこみました。アンコールにはショパンのワルツ、成田為三「浜辺の歌」。時代を200年前、100年前へと戻してコンサートを締めくくりました。

●音楽文化がもたらす、都市の未来図

さて7日間続いたエリアコンサートは、計86公演!に及びました。アートや音楽を通じて東京から文化を発信する、このエリアコンサートはそんな成熟した文化都市の一角も担っています。今回、主宰の方にもお話を伺いました。



「ショパンというとピアノを連想されると思いますが、やはりピアノ人口が多く、かつショパンの曲は皆さんご存知ということもあり、昨年と比べても多くの方にご来場頂きました。また4月6日より三菱一号館美術館*がオープンし、1日3?4千人にご来場頂いていますが、その方々にも街の魅力を感じて楽しんで頂いたと思います。他にも「ショパン展(?5月5日)」や「のだめカンタービレ♪ワールド」など、色々楽しめるコンテンツを散りばめています。

音楽というソフトは国境・年齢・性別もないという位置づけで捉えています。GWにはクラシックがほぼ定着し、秋には東京ジャズ(NHK主体)、クリスマスにはポップスと、年間を通して音楽に接して頂いています。三菱としては引き続き様々なソフトを提案し、街としても盛り上げていくようにしていきたいですね」(小武秀彰さん・三菱地所ビルマネジメント株式会社プロモーション事業部副主事)



*「マネとモダン・パリ」展は、三菱一号館美術館にて7月25日まで開催中!( http://mimt.jp/manet/)

あとがき

ラ・フォル・ジュルネ?熱狂の日音楽祭が始まって、今年で6年目。「GWに東京に行けば、街角で音楽に出会える」そんなイメージもすっかり定着しました。そして今回も様々な会場で、お客様とアーティストの触れ合いや出会いがもたらされました。「ショパンの宇宙」というテーマのもと、ショパンという無限の魅力を持つ存在を通して、一人一人が自分の内に広がる小宇宙と向き合い、他人の小宇宙を知る機会になったのではないでしょうか。音楽には一人一人の小宇宙を広げ、心を繋いでいく力がある。そんな原点に気づかせてくれるラ・フォル・ジュルネ・エリアコンサートでした。


http://twitter.com/lfj2010area/